叙述トリックの名手である折原一。
その折原一の第一作目「倒錯のロンド」は江戸川乱歩賞の最終選考まで残りました。
「倒錯のロンド」は序盤から伏線が絡み合い、登場人物と読者を次々に騙していく作りとなっています。
そんな「倒錯のロンド」を今回はあらすじから結末、伏線の部分をまとめました。
*ネタバレ部分は隠してあるのでご安心ください。
「倒錯のロンド」概要
- 書籍名:倒錯のロンド
- 著者名:折原一
- ページ数:315ページ
- ミステリジャンル:本格ミステリ
あらすじを紹介
月間推理の新人賞を目指す山本安雄。
彼はウィリアム・アイリッシュの「幻の女」をもとに山本安雄作の「幻の女」を作り始めた。
様々な苦悩を乗り越え、遂に原稿が完成。
その時に、親友の城戸がワープロで書き直した方がいいと言われたので、城戸に任せた。
しかし、城戸がワープロで完成させた「幻の女」を電車の網棚に忘れてきてしまう。
オリジナル原稿のため、替えもなく、忘れ物にも届けられていなかった。
山本は城戸の失敗を許さず、追い返してしまう。
一方、山本安雄の原稿を拾った永島一郎は「幻の女」を読み、感動。
新人賞の賞金に目がくらんで、彼は「幻の女」を自分が書いたことにして応募することを決意。
新人賞を受賞したのは白鳥翔の「幻の女」だった。
山本安雄は自分が書いた「幻の女」が白鳥翔によって盗作されたことを確信。
山本安雄と盗作者との対決。
物語の内容・構成(注:ネタバレあり)
物語の内容・構成(注:ネタバレあり)
第一部:山本安雄が原稿を書き始めてから、原稿を盗まれ、親友の城戸が永島一郎に殺害される。そして、永島は山本安雄を狙って襲撃し、原稿を盗むもそれはコピー。山本安雄は何とか原稿を発送。しかし、二次選考も突破できなかった。山本安雄は盗作者に殺意を抱く。
第二部:「幻の女」の作者である白鳥翔が登場。山本安雄は白鳥翔に対して、陰湿な攻撃を仕掛ける。次第に白鳥翔の精神は壊れていく。白鳥翔は婚約者にも見捨てられ、落ちぶれる。ついに婚約者の広美が死んでしまう。広美の前で立ち尽くしていると、白鳥翔は後ろから山本安雄に殴られて気絶。山本安雄により、白鳥翔は逮捕されてしまう。
第三部;山本安雄は白鳥翔を主人公とした小説を書くことを決意。しかし、ここでもう一人の白鳥翔が現れる。刑務所にいるはずの白鳥翔がいるはずがなく、山本安雄は困惑する。だが、別人だと発覚。山本安雄は日記をもう一人の白鳥翔に盗まれて、その人物は月間推理に「盗作の進行」というタイトルで応募。それが原因で永島一郎は逮捕。
第一の盗作:山本安雄は白鳥翔の「倒錯のロンド」を盗作
第二の盗作:永島一郎が山本安雄の日記を盗み、「盗作の進行」として応募
第三の盗作:釈放された白鳥翔が山本安雄が書いた「倒錯のロンド」を盗作
最後の盗作:山本安雄が白鳥翔の「倒錯のロンド」を江戸川乱歩賞に応募
仕掛けの解説(注:ネタバレあり)
ここからは「倒錯のロンド」の伏線や仕掛けについてを解説していきます。
未読の方は読まないことをオススメします!
「倒錯のロンド」仕掛けの解説(注:ネタバレあり)
「倒錯のロンド」の仕掛けは登場人物や読者を勘違いさせることにある。
まず、原稿を拾った永島一郎は城戸が山本安雄だと勘違いしている。
勘違いしたまま、城戸を殺害してしまう。
次に、読者に対する仕掛けは、新人賞を獲得した白鳥翔が電車の網棚から原稿を拾った永島一郎だと誤認させるもの。
確かに、永島一郎は白鳥翔として山本安雄から盗んだ「幻の女」を応募したが、実は白鳥翔の「幻の女」は前回の新人賞を受賞しているので、意味がなかった。
つまり、白鳥翔の「幻の女」は、山本安雄が原稿を書いていた当時にはすでに世に存在しており、山本安雄自身が白鳥翔の「幻の女」を盗作していたことになる。
原作者対盗作者の構図だが、裏では山本安雄、永島一郎、白鳥翔の三人で争いが起こる。
そもそも、なぜ読者は永島一郎が白鳥翔だと勘違いしてしまうのか、それは第一部の「盗作の倒錯」で永島がミキという女と遊んでいたときのことだ。
ミキから白鳥翔というペンネームにしたら? と勧められる。ミキはどこかで白鳥翔の「幻の女」を頭の片隅で知っていて、何となくタイトル「幻の女」と訊いて白鳥翔というペンネームを勧めたのだ。
永島一郎=白鳥翔であり、白鳥翔は別にも存在する。
白鳥翔は二人いることが分かる。
読んだ感想を紹介
倒錯のロンドの読後感は「え、仕掛けが多すぎて追いつかん」でした。
なのでもう一度、ペラペラ読み返してようやく伏線と結末が一致して解放感を得ることができたのです。
本作品は一人称の山本安雄を通して、読者も倒錯のロンドの世界にいるかのような感覚を味わうことができます。
また、山本安雄についつい感情移入してしまい「作品が盗まれた! どうするんだろう?」と一緒になって悩んだり。
叙述トリックの名手と言われている折原一の原点となる作品でした。
展開が行ったり来たりでせわしなく物語が進みます。
叙述トリック好きの方はぜひ、仕掛に挑戦してみてください!
私はまんまとハマりました。
最初の方から仕掛があることには気づいていましたが、
それよりも向こうの方が一枚も二枚も上手でした!
悔しい!!
まとめ【倒錯のロンド】
今回紹介した倒錯のロンドは奇しくも江戸川乱歩賞には届きませんでしたが、私の中では本当に面白いと思った作品で、なぜ江戸川乱歩賞を取れなかったのが不思議なくらいでした。
私も江戸川乱歩賞を目指して小説を書いているので、倒錯のロンドも参考にできたらいいなと思います。
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